2年生ゼミガイド

このゼミでは、次の三つの力を、それぞれ異なる方法で鍛えます。

  1. 数学:問題を自力で解き、他者に説明する力
  2. 英語:英語の音を細部まで聞き、話者の発音・リズム・間を再現する力
  3. 読む・考える・書く:文章を正確に読み、問いを立て、議論し、全員が納得できる文章を作る力

授業は1回90分です。おおよその配分は次のとおりです。


1. 毎週の予習

授業までに、全員が次の三つを準備してください。

数学

  • 指定範囲の基本問題を全問解く。

TED発音模倣

  • その回のTEDを聞く。
  • 自分に割り当てられた担当区間を話者の音声をまねて練習する。

『ひたすら読むエコノミクス』

  • 指定範囲を読んでくる。
  • キーワード、重要だと思う文、意味をうまく説明できない箇所に印を付ける。

2. 全15回の予定

時間欄は「数学/TED/読むエコ」の順です。

数学:予習範囲 TED 『ひたすら読むエコノミクス』 時間
1 予習なし Waldinger 第1章
2 第1章 基本 問1–4 Hartley 第2章 35/25/30分
3 第1章 基本 問5–6、問7(1)–(3) Esfahani Smith 第3章前半 35/25/30分
4 第1章 基本 問7(4)–(8)、問8–11 Edmondson 第3章後半 35/25/30分
5 第2章 基本 問1–6 Galef 第4章前半 35/25/30分
6 第2章 基本 問7–10 McWhorter 第4章後半 35/25/30分
7 第3章 基本 問1–5 Lewis 第5章 35/25/30分
8 第3章 基本 問6–11 Headlee 第6章 35/25/30分
9 第4章 基本 問1–3、6–7、9–10 Briceño 第7章 40/25/25分
10 第6章 基本 問1–8 Vanderkam 第8章前半 35/25/30分
11 第7章 基本 問1–5 O’Neil 第8章後半 35/25/30分
12 第7章 基本 問6–9、第8章 基本 問1 Pahlka 第9章前半 35/25/30分
13 第8章 基本 問2–4・8、第9章 基本 問1–2 Khan 第9章後半 40/25/25分
14 第9章 基本 問3–8 Grant 「まとめとオマケとあとがきと」 40/25/25分
15 Achor 今後の勉強について教員が話す

『ひたすら読むエコノミクス』で「前半・後半」とした回の切れ目は、次のとおりです。

  • 第3章前半:冒頭から「デートの主導権はどっち?」まで
  • 第3章後半:「相手の行動を予想できる?」から章末まで
  • 第4章前半:冒頭から「どうやって販売価格を決めるか」まで
  • 第4章後半:「消費者の好みによって価格を変える」から章末まで
  • 第8章前半:冒頭から「4つのオークション方式」まで
  • 第8章後半:「自分が最も得をする入札戦略」から章末まで
  • 第9章前半:冒頭から「組織内のコミュニケーションは難しい」まで
  • 第9章後半:「組織内の調整も難しい」から章末まで

3. 数学

教材

久保川達也『公式と例題で学ぶ大学数学の基礎』(共立出版、ISBN 978-4-320-11577-4)を使用します。

正誤表には使用範囲に関する訂正もあるため、必ず確認してください。

予習のしかた

指定された基本問題を、全員が全問・全小問解いてください。予習中は、教科書、ノート、公式解答例などを参照して構いません。

自己点検の目安は次のとおりです。

  • :何も見ずに解答を再現し、理由を説明できる。
  • :解答を確認した後なら再現できる。
  • ×:まだ自力では解決できない。

すべての小問を、授業前にできるだけ にしておくことを目標にしてください。予習時間の目安は週2~3時間です。

授業で行うこと

  1. ゼミ生の中から発表者3人をランダムに選ぶ。
  2. 今週の範囲から3小問をランダムに選び、一人1小問を割り当てる。
  3. 3人が同時に、黒板に解答を書く。
  4. 一人ずつ自分の解答を説明し、質問に答える。
  5. 発表者でなかった3人は、誤り、説明の省略、別解、検算方法などを指摘する。
  6. 最後に、全員で未解決の点を確認する。

板書中に参照できるのは問題文だけです。手ぶらで黒板に回答を板書してください。

解き切れないときも、黒板を空白にはしないでください。「どこまで分かったか」「何を試したか」「どの式や推論から先に進めなかったか」を書き、そこまでの考え方を説明してください。

数学の詳細予定

予習範囲 主な内容 小問数
1 予習なし。問題は授業時に配布 無参照の初回確認、板書方式の練習
2 第1章 基本 問1–4 逆関数、上限・下限、極限、連続性 12
3 第1章 基本 問5–6、問7(1)–(3) 連続性、微分可能性、導関数 11
4 第1章 基本 問7(4)–(8)、問8–11 合成・逆関数の微分、高階微分、指数・対数 12
5 第2章 基本 問1–6 平均値・ロピタル、接線・法線、極値 10
6 第2章 基本 問7–10 凸凹、テイラー・マクローリン展開 10
7 第3章 基本 問1–5 2変数の極限・連続性・偏微分 12
8 第3章 基本 問6–11 全微分、テイラー展開、極値、ラグランジュ法 12
9 第4章 基本 問1–3、6–7、9–10 不定・定積分、広義積分、重積分、変数変換 14
10 第6章 基本 問1–8 ベクトル、行列、逆行列、固有値、対角化 9
11 第7章 基本 問1–5 一般行列の演算、逆行列、掃き出し、ランク 11
12 第7章 基本 問6–9、第8章 基本 問1 連立方程式、線形独立、ランク、行列式 11
13 第8章 基本 問2–4・8、第9章 基本 問1–2 行列式計算、固有値、三角化 10
14 第9章 基本 問3–8 対角化、実対称行列、直交化、二次形式 12

今学期の対象は合計69問、146小問です。第5章(三角関数の微積分)、第10章(抽象ベクトル空間と線形写像)、各章の発展問題などは必修範囲から外します。


4. 英語:TED発音模倣

この課題の目的

英語のそれっぽい喋り方は本物を真似するしかありません。ここでは英語の意味などはどうでもいいです。とにかく発音と話し方の真似をし続けます。

練習方法は、次のだいじろー氏の動画を参考にします。

動画と同じく、短い範囲を何度も聞く、自分で録音する、原音と比較する、うまくいかない箇所だけ戻る、という練習を行います。

毎週の練習手順

練習時間の目安は計60~90分です。一度に済ませず、できれば3日ほどに分けて行ってください。

  1. 内容を理解する
    公式transcriptで、意味、未知語、固有名詞を確認する。
  2. 文字を見ずに聞く
    transcriptを閉じて2~3回聞き、強く聞こえる語、長い間、聞こえにくい音や消える音を探す。
  3. 短い塊をまねる
    3~7語ほどずつ「原音を聞く→止める→まねる」を繰り返す。最初は0.75~0.9倍速でもよいが、最後は原速で3回続ける。
  4. 原音に重ねる
    原音と同時に発音する。ずれた箇所だけを短く切り出して練習し直す。
  5. 自分だけで録音する
    原音を止め、書き込み済みtranscriptだけを見て録音する。

授業で行うこと

  1. 全員が一人約2分ずつリレー形式で実演する。前に出て本物さながらの真似をしましょう。恥ずかしがってはいけません。
  2. 全員の実演後、難しかった箇所を原音で確認。

実演中は、原音、イヤホン、読み上げ音声を使用できません。書き込み済みtranscriptは参照できます。

使用するTEDと担当区間

時刻は目安です。TED側の再編集などで数秒ずれた場合は、指定時刻に最も近い文または段落の境界で区切ってください。全編をA~Fの区間に分け、区間ごとの発話語数ができるだけ公平になるように区切っているため、実際の長さは1分32秒~2分26秒です。いずれも「一人約2分」の課題として扱います。

TED A~Fの区間
1 Robert Waldinger, “What makes a good life? Lessons from the longest study on happiness” A 0:00–2:13/B 2:13–4:23/C 4:23–6:36/D 6:36–8:24/E 8:24–10:15/F 10:15–12:33
2 Regina Hartley, “Why the best hire might not have the perfect resume” A 0:00–1:50/B 1:50–3:23/C 3:23–5:12/D 5:12–6:50/E 6:50–8:28/F 8:28–10:17
3 Emily Esfahani Smith, “There’s more to life than being happy” A 0:00–2:10/B 2:10–4:08/C 4:08–6:05/D 6:05–8:09/E 8:09–10:02/F 10:02–12:05
4 Amy Edmondson, “How to turn a group of strangers into a team” A 0:00–2:17/B 2:17–4:25/C 4:25–6:45/D 6:45–9:02/E 9:02–11:03/F 11:03–12:54
5 Julia Galef, “Why you think you’re right — even if you’re wrong” A 0:00–1:54/B 1:54–3:48/C 3:48–5:38/D 5:38–7:26/E 7:26–9:30/F 9:30–11:24
6 John McWhorter, “4 reasons to learn a new language” A 0:00–1:42/B 1:42–3:28/C 3:28–5:10/D 5:10–6:44/E 6:44–8:16/F 8:16–9:48
7 Sarah Lewis, “Embrace the near win” A 0:00–1:55/B 1:55–3:39/C 3:39–5:30/D 5:30–7:40/E 7:40–9:24/F 9:24–11:24
8 Celeste Headlee, “10 ways to have a better conversation” A 0:00–1:46/B 1:46–3:42/C 3:42–5:37/D 5:37–7:19/E 7:19–9:16/F 9:16–11:16
9 Eduardo Briceño, “How to get better at the things you care about” A 0:00–1:43/B 1:43–3:44/C 3:44–5:36/D 5:36–7:13/E 7:13–9:04/F 9:04–11:08
10 Laura Vanderkam, “How to gain control of your free time” A 0:00–1:49/B 1:49–3:45/C 3:45–5:31/D 5:31–7:25/E 7:25–9:31/F 9:31–11:40
11 Cathy O’Neil, “The era of blind faith in big data must end” A 0:00–2:15/B 2:15–4:16/C 4:16–6:36/D 6:36–8:58/E 8:58–10:56/F 10:56–13:05
12 Jennifer Pahlka, “Coding a better government” A 0:00–1:38/B 1:38–3:30/C 3:30–5:30/D 5:30–7:22/E 7:22–9:33/F 9:33–11:50
13 Sal Khan, “Let’s teach for mastery — not test scores” A 0:00–1:37/B 1:37–3:16/C 3:16–5:04/D 5:04–6:49/E 6:49–8:46/F 8:46–10:36
14 Adam Grant, “Are you a giver or a taker?” A 0:00–2:13/B 2:13–4:22/C 4:22–6:27/D 6:27–8:27/E 8:27–10:53/F 10:53–13:15
15 Shawn Achor, “The happy secret to better work” A 0:00–2:02/B 2:02–3:59/C 3:59–6:09/D 6:09–7:58/E 7:58–10:06/F 10:06–12:00

5. 読む・考える・書く:『ひたすら読むエコノミクス』

教材

伊藤秀史『ひたすら読むエコノミクス』(有斐閣、2012年、ISBN 978-4-641-16397-3)を使用します。

この時間の目的は、経済学の知識を暗記することだけではありません。文章を正確に読み、「分かったつもり」の箇所を言葉にし直し、他者との議論を通じて一つの説明文を完成させることが目的です。日本語の文章を数式なしで扱うことで、英語の解読や計算ではなく、文章そのものの読みと説明に集中します。

予習のしかた

指定範囲を読み、次の箇所に印を付けてください。

  • 重要だと思うキーワード
  • 筆者の主張を表すと思う文
  • 読めたが、自分の言葉では説明しにくい箇所
  • 前提や論理のつながりが分からない箇所
  • 本当にそう言えるのか疑問に思う箇所

授業で行うこと

毎回、次の流れで一つの共同答案を作ります。

  1. 問題の提示
    教員が、その週のキーワードまたはキーセンテンスに関する設問を一つ提示する。
  2. まず各自で答える
    全員がFormsに短い仮回答を書く。目安は200~300字。最初から正解を当てることより、自分がどう読んだかを言葉にすることを重視する。
  3. 回答を比べる
    回答を一覧にし、どこが一致し、どこが曖昧で、何を明確にしたいかを全員で考える。
  4. AIへの問いを作る
    AIに何を尋ねれば議論が前に進むか、どのように聞けば具体的な批評が返るかを相談し、全員でプロンプトを作る。
  5. AIに最大2回だけ質問する
    教員がその回の本文と必要な文脈を事前に与えた共用AIを使う。送信一回を一質問と数える。演習中、個人端末から別にAIへ質問してはいけない。AIの答えを正解として受け入れず、本文に照らして、使える点、怪しい点、答えていない点を判断する。
  6. 1本の共同答案に収束させる
    二回までのAI回答と全員の議論を材料に、全員が本文に照らして説明できる一つの回答を完成させる。

「全員が納得する」とは、全員が筆者の意見に賛成することではありません。最終答案を、本文に根拠を置いて自分でも説明できる状態にすることです。どうしても解消しない解釈の違いは、無理に消さず「ここは二通りに読める」と答案に残して構いません。

二つの役割

毎回、異なる二人が次の二役を一つずつ担当します。同じ人が二役を兼ねることはありません。

  • 進行役:全員の発言を引き出し、論点を整理し、時間内に意思決定する。
  • 書記・AI操作役:回答をPCで編集し、全員が決めたプロンプトだけをAIに送り、やり取りを保存する。

6. 期末提出物

期末には、次の二点を提出します。

  1. TED発音模倣音声
  2. 期末レポート「経済学で現象を読み解く」

提出先、提出期限、締切時刻は別途知らせます。

6.1 TED発音模倣音声

課題

今学期に扱った15本から一つを選び、そのTEDの中の連続した約6分を、一人で模倣して録音してください。

提出する音声は一つの連続したテイクにしてください。

  • ファイル名:学生番号_氏名_TED短縮題名

6.2 期末レポート「経済学で現象を読み解く」

課題

『ひたすら読むエコノミクス』で学んだ概念を一つ以上使い、あなたが関心をもつ具体的な現象を分析してください。身近な経験を題材にすることを勧めますが、ニュース、制度、社会現象などでも構いません。

数式は使わず、概念と分析を自分の言葉で説明してください。概念をたくさん並べるより、一つの概念を正確かつ深く使うことを重視します。

  • 本文:2,000~3,000字
  • 形式:PDFまたはDOCX
  • ファイル名:学生番号_氏名_期末レポート

本文に必ず含めるもの

  1. 分析する問い
    何を、なぜ不思議だと思ったのかを具体的に示す。
  2. 用いる概念の説明
    『ひたすら読むエコノミクス』の該当頁を示し、本文を写すのではなく、自分の言葉で概念を説明する。
  3. 現象の分析
    登場する人々、置かれた状況、選択、利害、情報、予想される反応などをつなぎ、なぜその結果が生じるのかを説明する。
  4. 限界または別の説明
    その概念だけでは説明できない点、分析が成り立つ条件、反例、別に考えられる説明のうち、少なくとも一つを扱う。
  5. 結論
    最初の問いに対する、現時点での答えを簡潔に示す。

題材の例

  • フリマアプリで評価制度が重要なのはなぜか。
  • 人気授業の配属方法によって学生の行動はどう変わるか。
  • サークルやゼミの共同作業で負担が偏るのはなぜか。
  • アルバイト先で細かな規則と現場の裁量が併存するのはなぜか。
  • 同じ商品でも、店や時間によって価格が異なるのはなぜか。

これらは例であり、そのまま選ぶ必要はありません。また、「これはモラルハザードである」のように概念名を付けるだけでは分析になりません。その概念によって、現象のどの部分が、どのような仕組みで説明できるのかを書いてください。

AIの利用

AIは利用できます。ただし、レポート全体をAIに書かせて提出することは認めません。

AIを使う前に、問い、用いる概念、現象を説明する仕組みについて、自分の構成案を作ってください。AIには、反例、説明の飛躍、見落とした条件、文章の曖昧さなどを質問するとよいでしょう。AIの回答は正解とは限らないため、採用するかどうかは自分で判断してください。

レポートとともに、次のものを提出してください。

  1. AIを使う前に作った構成案
  2. AIとの会話記録

AIを使用しなかった場合は「使用なし」と記載してください。